赤ちゃんのエナメル質形成不全の原因・治療法まとめ

生えたばかりなのに赤ちゃんの歯が変色していたり、穴があいていたりしていませんか?
それはエナメル質形成不全かもしれません。エナメル質形成不全は原因不明なことが多い病気で、遺伝でなる場合もあります。
エナメル質形成不全になった場合の治療法や治療費だけでなく、永久歯をエナメル質形成不全にさせないための対処法まで、エナメル質形成不全の原因・治療法をまとめました。

エナメル質形成不全とは

エナメル質形成不全とは歯の表面の病気です。通常歯の表面はエナメル質というもので覆われています。エナメル質は人体の中で一番硬い素材でできていて、虫歯にならないように歯を守ってくれているものです。
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出典:目で見るお口の百科 家庭の歯学/クインテッセンス出版株式会社.
このエナメル質が何らかの原因により、上手く作られなかった歯のことをエナメル質形成不全と言います。エナメル質形成不全と聞くと珍しい病気のように思われがちですが、決して珍しいものではなく、永久歯では10%程度、乳歯ではそれ以下に見られる病気です。

■赤ちゃんの乳歯がエナメル質形成不全になる原因

●栄養障害
歯は母親のお腹にいるときから形成されます。母親や生後間もない赤ちゃんが歯の成分であるカルシウムやリン酸の不足やビタミン不足、とくにビタミンD欠乏症の人はエナメル質に形成障害が起こることがあります。

●早産
早産で生まれた子供にエナメル質形成不全が多いことが報告されています。早く生まれることにより、栄養が不十分な状態のままになっている可能性があります。

はっきりとした原因はわかっていませんが、こういったことが原因として挙げられます。

■永久歯がエナメル質形成不全になる原因

永久歯の場合は先ほど挙げた栄養不足の他に下記のような例が挙げられます。永久歯をエナメル質形成不全にさせないために気を付けていきましょう。

●乳歯をぶつけたり重度の虫歯による神経損傷
乳歯虫歯がひどく歯の神経が死んでしまったり、歯をぶつけた衝動で歯の根が折れたりすると、永久歯の成長に影響を与えてエナメル質形成不全になる可能性があります。
また、乳歯虫歯を抜歯しなくてはならなくなると永久歯のエナメル質形成不全だけでなく、永久歯の歯並びにも影響が出てきます。

●発疹性の病気、熱性の病気
生後1歳前後に発疹性の病気や熱性の病気にかかると、病気や与えられた薬の影響により、エナメル質の元になるエナメル芽細胞が影響を受けてエナメル質の形成が阻害されることがあります。
心配な場合は小児科へ行き、そういった副作用がないか確認するとよいでしょう。

●過度のフッ素摂取
高濃度のフッ素を長期間にわたって摂取すると歯に変色を起こしたり、歯にくぼみができ、重度のエナメル質形成不全になることがあります。
しかし、現在日本で市販されているものに関しては低濃度なので毎日使用してもほぼ問題ない程度になっています。

■遺伝でエナメル質形成不全になった場合

遺伝によってエナメル質形成不全になる場合もありますが、8千人~1万4千人に1人と言われているため、かなり稀です。
しかし、遺伝でエナメル質形成不全になると、乳歯、永久歯のすべての歯にエナメル質形成不全が起こってしまいます。
また、複数の歯にエナメル質形成不全が起きてしまった場合、歯がすり減りやすく、噛み合わせの低下や崩壊が起こるのを防ぐためにも、被せ物をする治療が勧められます。

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症状の重さで見るエナメル質形成不全の治療法

乳歯のエナメル質形成不全の症状は、色と穴の深さ、痛みでわかります。

●軽度のエナメル形成不全
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出典:まいたりんの気まぐれ日記

生えたばかりの歯の色の一部が濃い白や黄色、茶色など、変色している状態は軽度のエナメル質形成不全です。
こちらの画像は歯の先端が変色しています。この程度のエナメル質形成不全であれば、痛みは特にありません。

●重度のエナメル質形成不全
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出典:目で見るお口の百科 家庭の歯学/クインテッセンス出版株式会社.

上の画像のように歯の表面にくぼみがあったり欠けて生えてくる場合は重度のものになります。くぼみがあると歯磨きも行き届かないことが多いので、より虫歯になりやすいと言えます。
重度のエナメル質形成不全は熱いものや冷たいものがしみて痛い場合もあります。

症状の重さによる治療法と治療費

エナメル質形成不全は歯の表面のバリアであるエナメル質がないため、エナメル質の代わりとなる新たなバリアを治療で作ってあげ、歯の表面を強くしてあげることが多いです。

●軽度のエナメル質形成不全の場合はフッ素塗布

歯の色が変色している軽度のエナメル質形成不全の場合は治療はしなくても大丈夫です。歯医者で定期的にフッ素塗布します。
フッ素を塗布すると歯の表面を堅くして酸によってとけにくくすることができます。よって、歯の表面にあるエナメル質が欠如していたとしても歯の表面を強くすることができます。
また、赤ちゃんの段階だと治療ができないと判断されることも多いですが、フッ素塗布は治療ではなく、とても簡単なので赤ちゃんでもできます。
フッ素は歯医者で塗布する方法の他に市販のフッ素を自宅で塗布することもできます。それぞれの特徴を見てみましょう。

◆歯医者でのフッ素塗布
・濃度:9000ppmの高濃度
・費用:1回1000円程度
・頻度:3ヶ月に1回程度(症状によって頻度などが変わる可能性もあります。)

先程、高濃度のフッ素を長時間にわたって摂取するとエナメル質形成不全になる可能性があると挙げましたが、歯医者が歯の状況や赤ちゃんの様子を見ながら塗布するため安心して大丈夫です。
また、お住まいの地域次第では無料で行っていることもあります。しかし、フッ素塗布は乳児医療補助対象外なので、歯科医によっては2000~3000円程度かかるところもあります。
一度お住まいの自治体に問い合わせるとよいでしょう。
フッ素の塗布は虫歯の予防にもなります。乳歯であればエナメル質形成不全にかかっていなくても塗布することをお勧めします。

◆市販のフッ素塗布
・濃度:500~950ppmの低濃度
・費用:500円程度で市販されている
・頻度:毎日でも全く問題ありません。

家庭用のフッ素はドラッグストアで販売されています。歯医者に比べるとかなりの低濃度になりますが、フッ素の過剰摂取を防ぐため、1つの商品をすべて口の中に含んでも害がでないように考慮されているからです。
低濃度のため毎日使用しても問題はありませんが、使用するフッ素の濃度が400ppm以下だと毎日使っていたとしても効果は出にくいです。必ず500ppm以上から使用しましょう。

エナメル質形成不全の歯は他の歯に比べて虫歯になりやすいです。市販のフッ素塗布で日々のケアを行い、歯医者のフッ素塗布でスペシャルケアをするという形でどちらも塗布してみましょう。

●重度のエナメル質形成不全の場合は治療が必要

表面がでこぼこしている重度のエナメル質形成不全の場合はレジン重鎮治療を行います。レジンとはコンポジットレジンの略で虫歯になったときなどによく使用する歯科用のプラスチック材です。
レジン重鎮することで柔らかくなったところや、でこぼこになっているところを補強・修復します。レジンは経年劣化して何年後かには色が変わってしまうこともあるため、見た目や色が気になる場合は歯の色に近いセラミックを使用することもあります。

◆赤ちゃんの場合
赤ちゃんの場合はまだ治療ができないことも多いため、軽度の場合同様、歯医者でのフッ素塗布をして様子を見ます。その後、治療ができるようになったら治療します。

エナメル質形成不全かどうかの診察、詳しい治療の方法は歯医者へ行き、相談しましょう。

エナメル質形成不全の対処法と予防法

永久歯がエナメル質形成不全にならないための予防法

●乳歯をぶつけないように気をつける
歯をぶつける年齢が低いほどエナメル質形成不全の程度もひどくなるとされていますので、お子さんが転んだ時に歯をぶつけないよう、注意を払いましょう。
しかし、本当に気を付けていただきたいのは乳歯の虫歯です。

虫歯にさせない=エナメル質形成不全の対処法&予防法

エナメル質形成不全になると虫歯になりやすいです。また、乳歯を虫歯にしてしまった場合は永久歯がエナメル質形成不全になる可能性が高まります。まずはエナメル質形成不全になっていてもなっていなくても虫歯にさせないことが大切です。
●自宅でのデンタルフロスを使用した仕上げ歯磨き
仕上げ歯磨きは1日1回以上は必ず行いましょう。その時はデンタルフロスも使うとよいです。
歯ブラシだけで歯垢を落とそうとすると約60%しか落とすことができませんが、デンタルフロスを使用すると80%まで歯垢を落とすことができます。

●歯医者でのフッ素塗布と定期健診
フッ素塗布と定期健診にはそれぞれ2つの役割があります。

◆歯医者でのフッ素塗布の役割
・歯の質を強化し、虫歯を予防する
フッ素塗布すると歯の質を強化することができます。歯の質を強化することで、虫歯菌が出す酸から溶けにくくなり、虫歯を予防することができます。

・再石灰化を促し、初期虫歯を治す
フッ素塗布をすると虫歯菌が出した酸で溶けた歯を元に戻す再石灰化を促します。再石灰化を促すことができると初期の虫歯であれば治すことができます。

また、フッ素は市販でも販売されているので自宅では市販のフッ素も使うとよいでしょう。

◆歯医者での定期健診の役割
・歯の健康状態を確認し、虫歯を早期発見する
歯全体の健康状態を定期的に確認することで虫歯を早期発見できます。虫歯を軽度の状態で早期発見できると治療の時間や治療費も少なくて済みます。

・歯のクリーニングや歯磨き指導で虫歯を予防する
定期健診では歯に着いた歯石や歯垢を除去してくれます。歯石や歯垢が溜まると虫歯になりやすいので定期的に除去することで虫歯を防ぐことができます。
また、歯磨き指導をしてくれるので歯垢がたくさん付いていたところをどう磨けばいいか見直すことができ、虫歯を予防できます。

乳歯を虫歯にしてしまうと永久歯でエナメル質形成不全になってしまうことがあります。特に乳歯の虫歯は進行しやすく、少し放っておくとすぐに悪化して神経に達し、歯根の奥まで感染が進むことがあります。
日頃からフッ素塗布と定期健診両方行い、虫歯になるのを防ぎ、もし虫歯になったときは早期発見できるように大切にケアしましょう。

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まとめ

エナメル質形成不全のことはわかりましたか?歯の色や穴があいているかでエナメル質形成不全かどうかは確認できます。もし現在乳歯がエナメル質形成不全になっていてもなっていなくても虫歯にならないように気を付けることが大切です。
虫歯になると治療が増え、治療費もかかってしまうため、永久歯がエナメル質形成不全にならないためにも早めに対処しておきましょう。